誰がイスラエルの人質を取り戻しハマスを掃討すべきなのか

ハマス・イスラエル紛争

1.現状

昨年10月7日、パレスチナ・ガザ地区のイスラム(テロ)組織ハマスは、イスラエルへ向けて数千発のロケットを発射し、あるいは、その戦闘員は国境を越えイスラエルに侵入し、イスラエル人及び同国に滞在中の外国人を、千名以上殺害し、二百人以上を連れ去りました。

それに対して、イスラエルは翌8日ハマスに対して、正式に宣戦布告し、以降掃討戦を展開しています。

しかし、そもそも、拉致された人たちを取り戻したり、ハマスを掃討したりは、イスラエルが対処すべき事柄なのでしょうか。

2.誰がそれに対処すべきなのか

パレスチナは、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の二か所から成ります。
ハマスはその内の、ガザを支配しているにすぎません。すなわち、彼らはパレスチナ全体を代表している訳ではありません。ですから、ハマスには、パレスチナ人の意見はこうであると言う資格はありません。
1月15日配信の「テレ朝news」曰く、

「中東のテレビ局アルジャジーラによりますと、ハマスの軍事部門の報道官が14日、軍事衝突の開始から100日目を迎えたことに関する声明を発表し、『発端となった攻撃は100年にわたる占領者による虐殺に対抗するものだ』と主張し、攻撃を正当化しました」(1)

「発端となった攻撃は100年にわたる占領者による虐殺に対抗するものだ」
1月16日公開の投稿「なぜハマスはイスラエルを攻撃したのか」でも述べたように、そもそもハマスによるイスラエル攻撃の目的は、明確ではありません。が、一歩譲って、上記が目的だとしましょう。
しかし、それはハマスの主張、もしくは、せいぜいガザ地区のパレスチナ人の主張だと言えても、ヨルダン川西岸地区を含めたパレスチナ人全体の主張だとは言えません。

既に述べたように、ハマスはパレスチナ全体を掌握している訳ではありませんし、パレスチナの大統領は下記のように発言しているからです。ウィキペディアの「2023年パレスチナ・イスラエル戦争」から、引用します。

「パレスチナ自治政府は対イスラエル奇襲には関与しておらず、パレスチナの大統領マフムード・アッバースは『ハマースはパレスチナ人の代表ではない(後にハマースの名指しは削除)』『ハマースは人質の即時解放をすべき』『ハマースによるイスラエル南部への攻撃を非難する』と表明している」


パレスチナ人全体の主張だと言うのなら、それなりの正式かつ法的な手続きを経た上で、すなわち、ハマスがパレスチナの代表であることを示した上での主張でなければなりません。

もう一つの問題は、10月7日にハマスがとった行動、つまり、イスラエルへの攻撃は、目的に対する手段として適切だったのかということです。あるいは、ハマス以外のパレスチナ人は、それが適切だったと考えるのかということです(2)。

何れにしろ、上記の二つの問題に対する解答がなければなりません。そして、解答を示しえないのなら、ハマスの主張=パレスチナ人の総意だと判断することはできません。
ところが、世の中には、ハマスの主張=「発端のなった攻撃は100年にわたる占領者による虐殺に対抗するものだ」=パレスチナ人の主張だと判断し、それを前提に物事を論じる人が多い。

3.パレスチナのあるべき姿

もしパレスチナ人が、統一国家、統一政府、統一治安部隊を持っていたなら?
当然、人質の解放にしろ、ハマスの掃討にしろ、パレスチナ政府が行うべきなのです。
ところが、パレスチナ人は内紛ばかりしていて、統一国家以下を作れないために、仕方なくイスラエルが対処しているというのが実情でしょう。

イスラエルのハマス掃討戦は苛烈なのかもしれません。そして、苛烈なために、ジェノサイドだとか非難する人たちもいます。しかし、本来ならパレスチナ人自身がやるべきことをやっていないとして、イスラエルよりも先に、パレスチナ人及びパレスチナ自治政府を批判すべきではないでしょうか。

パレスチナのジリ貧の原因は、入植地を拡大するイスラエルの責任のように言われますが、根本的な理由は、パレスチナ人が統一国家、統一政府を作れないことにあるのではないか。

江戸時代の日本は幕府と諸藩に分かれていましたが、明治維新によって、国家統一を果たし、欧米諸国と対峙できるようになりました。
パレスチナ人も国家統一を果たし、富国強兵を行って、自国の領域をちゃんと自国で守れる国を目指すべきではないでしょうか。

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(1) 「大規模衝突開始から100日 ハマスが声明『多くの人質が死亡した可能性』
(2) ドイツの「コンラート・アデナウアー財団」によるヨルダン川西岸地区における世論調査によれば、「ハマスの支持率は9月の調査では12%にとどまったが、イスラエルとハマスの戦争勃発以降、4倍近く上昇」し、「ハマスの支持率が44%で1位を記録した」という(3)。因みに、9月には、「支持勢力なし」が52%だったそうです。
興奮が醒めた後で、イスラエル攻撃は手段として適切だったと、パレスチナ人は考えるでしょうか(4)。
(3) 「ヨルダン川西岸地区でハマス支持率が急上昇・・・自治政府との連合の議論も
(4) 参考記事です。
ガザ住民『ハマスをぶっつぶせ』『戦争をやめろ』・・・異例の事態、戦闘長期化での惨状に怒りの声

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