ハマスは目的を達成しつつあるか

ハマス・イスラエル紛争

1.ロシアは目的を達成しつつある

一昨年2月24日、ロシア軍はウクライナへ侵攻しました。
その目的については、同日プーチン大統領がテレビ演説で公言しています(1)。「ドンバスで起きている悲劇的な事態」と「ロシアの重要な安全保障問題」に対処することです。
そして、その目的は、その後も一貫しています(2)。

最近の戦況は、ウクライナ側は兵員も弾薬も枯渇しつつあり、また、アメリカの支援がストップしていて、同国軍は劣勢になっています。
2月17日、ドネツク州の要塞都市アウディイウカが陥落し、その後東部南部の両方面で、ウクライナ軍は後退している模様です。

一方、砲弾と人員の点で優位にあるロシア軍は、侵攻当初はモタモタしたものの、ここにきて優勢になり、完全とは言えないまでも、戦争目的を達成しつつあります。

2.ハマスは目的を達成しつつあるか

昨年10月7日パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスは、イスラエルに対し大規模な攻撃を行い、イスラエル人及び同国に滞在中の外国人を千人以上を殺害し、あるいは、二百人以上を連れ去りました。

もう一方の、ロシア同様先に手を出した側であるハマスの場合はどうでしょうか。目的を達成しつつあるでしょうか。彼らが目的を達成しつつあるかどうかについては、下記の問いに答える必要があるでしょう。

第一。そもそもハマスの攻撃の目的は何だったのでしょうか。
目的が明確でなければ、それを達成しつつあるか否かは判定しようがありません。

第二。目的が明確であるとして、実際にその目的を達成しつつあるでしょうか。

第三。10月7日のイスラエルに対する攻撃は、その目的を達成するための手段として適切だったのでしょうか。

第四。パレスチナはヨルダン川西岸地区とガザ地区に分かれていますが、ハマスは後者を掌握しているにすぎず、パレスチナ人全体の意思を代表していません。
そして、10月7日の大規模攻撃は、パレスチナ人全体が望んだことなのでしょうか。

3.過剰反撃と過剰忖度

以前にも引用しましたが、パレスチナ問題に関して、次のようなことを言う人たちがいます。

「なぜ、最初にハマスがイスラエルに攻め込み、虐殺行為をしたのか。
それは、今まで、イスラエルがパレスチナに侵略行為をし、パレスチナ人を人間と見ていない行為をしてきたからです」

このような発言をする人は、「ハマスの主張」と「『ハマスの主張』だと自分が考えること」の、また、「パレスチナ人が望んでいること」と「『パレスチナ人が望んでいる』と自分が考えること」の区別ができていません。

そして、彼らは、前節の四つの問いに対して、返答はできないでしょう。
そのような人に限って、ハマスの攻撃に対するイスラエルの反撃について、過剰だとかジェノサイドだとか批判する。

彼らのハマスの攻撃に対する共感はこそ、過剰忖度ではないでしょうか。

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(1) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513641000.html
(2) ヤフーコメント欄には、ウクライナ信者ないし応援団と称される人たちがいます。その論説を見れば分かりますが、彼らはプーチン大統領による侵攻直前のテレビ演説を読まずに、ウクライナ侵攻を論じています。同演説は、この問題に関する必読文献でしょう。
だから、その言説がズレているのだと思います。

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