一昨年(2022年)9月24日、ニューヨークの国連本部での記者会見で、ロシアのラブロフ外相は発言しました。
「プーチン大統領が2月24日に発表したことを、もっと頻繁に、気をつけながら読むといい。そこに全部書いてある。読めばわかる」(1)
なぜロシアがウクライナに侵攻したのか。
一昨年の2月24日にプーチン大統領が侵攻直前に行ったテレビ演説、「そこに全部書いてある」ということでしょう。
同演説で、プーチン氏は下記のように語り始めました。
「親愛なるロシア国民の皆さん、親愛なる友人の皆さん。
きょうは、ドンバス(=ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州)で起きている悲劇的な事態、そしてロシアの重要な安全保障問題に、改めて立ち返る必要があると思う。
まずことし2月21日の演説で話したことから始めたい」(2)
プーチン氏が演説で述べているのは、「ドンバスで起きている悲劇的な事態」と「ロシアの重要な安全保障問題」についてです。つまり、これらが、ロシアがウクライナへ侵攻した理由の二本柱です。
語り始めの文言とは違って、演説ではまず「ロシアの重要な安全保障問題」について語り、その後「ドンバスで起きている悲劇的な事態」について述べています。
前者と後者の間に、次のようなくだりがあります。
「・・・それこそ、何度も言ってきた、レッドラインなのだ。
彼ら(アメリカとその同盟諸国)はそれを超えた。
そんな中、ドンバスの情勢がある・・・」
この文言で、とりわけ「そんな中、ドンバスの情勢がある」で、ロシアの侵攻の主目的が「ロシアの重要な安全保障問題」であり、従目的が「ドンバスで起きている悲劇的な事態」であるのが分かります。
演説では、後者よりも前者の方を先に語っていること、同演説で言及されている2月21日の演説も、その内容の殆んどが「ロシアの重要な安全保障問題」に関してであり、「ドンバスをめぐる状況に関して」は、つけたしくらいの分量しかないことによっても、侵攻の目的の主従は明らかです。
『月刊 Hanada』2022年5月号の編集長インタビューで、安倍晋三元首相は、「プーチン大統領は領土的野心を持っているのではなく、自国の防衛、安全の確保という観点から今回のような行動を起こしたのではないかと思います」(36頁)と発言しています。
当のプーチン氏自身も、領土的野心説を否定しています。
「ウクライナ危機は領土対立ではない。それははっきりさせておきたい。ロシアは領土面積で世界最大の国であり、我々は新たな領土の征服には関心がない」(3)
ロシアの今回の行動の適不適はさておき、その主目的は自国の安全保障問題であること。
それを外しては、ロシアの行動は理解できないだろうと思います。
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(1) https://www.asahi.com/articles/ASQ9T41MQQ9TUHBI004.html
(2) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513641000.html
(3) https://www.cnn.co.jp/world/35209957.html
【追記】
好記事です。
「平和への最大のチャンス、ウクライナ和平合意を壊したのは誰か 交渉当事者から新証言相次ぐ 『ロシアを追い詰めろ』が生んだ悲劇」
【追記2】
デスクトレーを整理していたら、下記の記事が出てきました。
上記の記事と同じような内容です。
このような記事を読んだ記憶はありませんが、重要だと思ったからプリントアウトしたのでしょう。
「ウクライナの汚職まみれも原因か 欧米の支援が滞る理由とは・・・双方の不信がわきあがる」
【参考記事です】
今年の1月15日、「ロシアのペスコフ大統領報道官は、ダボス会議でのウクライナに関する協議について」、「『平和的な外交手段によって安全保障上の目的を達成することが望ましいが、西側諸国とウクライナがロシアの安全保障に配慮しないため、不可能になっている。このため、ロシアは特別軍事作戦を継続し、目的を達成する』と語った」
(https://jp.reuters.com/world/ukraine/WTVP6YWWMVOJJO7EABUHIYU64U-2024-01-15/)
ロシアにとって、「重要な安全保障問題」が最優先でしょう。