1.NATOの現元高官発言
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長の首席補佐官スティアン・イェンセン氏は、今月15日ノルウェーの討論会で、「ウクライナが領土の一部を諦めれば、(戦争が終結し)NATOに加盟できる可能性がある」(1)と語りました。
それに対して、ウクライナ側が反発し、その後イェンセン氏はその発言を「後悔している」と、一応弁明しました。
どころがさらに、フランスの元大統領サルコジ氏は、16日仏紙フィガロのインタビューで、ウクライナが「侵攻以前の状態を回復できると考えるのは『幻想』であり、ロシアに占領された領土の完全な奪還を目指すウクライナの譲歩なくして和平はあり得ない訴え」(2)ました。
また、「欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への加盟は難しいとの認識を示した」(同前)とも。
それらの発言に反発するのは分かるのですが、ではウクライナに勝算はあるのでしょうか。反転攻勢はうまく進んでいませんし、同国を支援するNATO側にも、上のように考える人が一定数いるのが分かります。
一方、ウクライナのクレバ外相は16日AFPに対し、「ロシア軍に占領されているすべての領土を、どれだけ時間がかかろうとも奪還するとの決意を表明」(3)しました。
「どれだけ時間がかかろうとも」とは、どれだけ兵士が犠牲になろうともや、どれだけ西側からの支援を受けることになろうともと同義です。
実際にクレバ氏は、「ロシア軍の完全駆逐を目指す上で、自国軍には西側からの兵器と弾薬の安定供給が引き続き不可欠になるとの認識を示し」(同前)ました。
NATOの高官たちから、前のような発言が出るのも、無理はありません。
2.力による決着を選択した
ウクライナは全領土を奪還するまで、ロシアとの交渉には応じないと表明しています。ということは、力で決着をつける選択をしたということです。その場合、勝った側はより多くを獲得することになりますが、負けた側はより多くを喪失することになります。
軍事力による解決を選択したということは、
A、奪わられた領土の殆んどを取り戻すことができ、かつ、NATOへの加盟をはたすことができる
可能性がある反面、
B、奪われた領土の殆んどを取り戻すことができず、かつ、NATO加盟もはたせない
可能性もあるということです。
ウクライナはAとBの中間を求めていません。である以上、戦争の終わりはABどちらかに近い形にならざるをえません。
ウクライナも、西側の彼らの応援団も、力による決着の結果を受け入れなければなりません。
(1) 「『和平交渉入りを決めるのはウクライナ』NATO事務総長」
(2) 「『ロシアは必要』=サルコジ元仏大統領発言が物議」
(3) 「『どれだけ時間がかかろうとも』領土は全て奪還 ウクライナ外相」