嘘つきブリンケン

1.一つ目の嘘

アメリカのブリンケン国務長官は、7月23日に放送されたCNNの単独インタビューで、次のように述べたという。ロシア政府とプーチン大統領の、

「その目的は、ウクライナを地図から消し去り、独立と主権を取り除き、ロシアに取り込むことだった。それは、とっくの昔に失敗した」(1)

これまで、当ブログで何度か書きましたが、昨年2月24日侵攻直前のテレビ演説で、プーチン大統領は、「私たちの計画にウクライナ(全)領土の占領は入っていない」と語っています。
ということは、ロシアの目的は、「ウクライナを地図から消し去り、独立と主権を取り除き、ロシアに取り込むこと」ではないということです。

それにしても、アメリカの国務長官であるブリンケン氏が、プーチン氏の侵攻前のテレビ演説を見て(読んで)いないのだとしたら、不見識だと言わざるをえませんし、見ていて上記のように発言したのだとしたら(読んでいないはずはないので)、嘘つきだと言わざるをえません(2)。

もしロシアの目的が、ウクライナの全土を併合することだったら、このたびの侵攻は「とっくの昔の失敗した」ということになりますが、同国の目的がそうでないのだとしたら、必ずしも失敗したということにはなりません。

2.二つ目の嘘

ブリンケン氏は、先のインタビューで、ウクライナが「当初(ロシアに)占領された地域の約50%を既に取り戻した」(3)と述べたそうです。

また、翌日24日、米国務省の報道官マシュー・ミラー氏は記者会見で、「ウクライナが2022年のロシアによる侵攻開始後に一時支配された領土の内、61%を奪還したとの見方を示した。2014にロシアが侵攻した南部クリミアを含めれば、取り戻した地域は45%になるとした」(4)

ウクライナは、50もしくは61%もの領土を奪還したでしょうか。どうも私が受ける印象とは異なっています。「一時支配された」という言葉が曲者で、どうやら、ロシア軍が一歩でも足を踏み入れた土地のすべての領域、たとえば、侵攻初期にキーウを襲いましたが、キーウ特別州かキーウ州の全域も、「一時支配された領土」に含まれるのかもしれません。

ミラー氏は、ウクライナは「領土を取り戻すため、信じられないほどの成功を収めている」とも述べたという。やれやれ。

大本営発表とは、帝国日本政府の専売特許だと思っていましたが、ウクライナ戦争で分かったのは、ウクライナや西側政府も、そして、それらの諸国のメディアも、同じようなことをやるのだということです。

(1) 「ウクライナを地図から消すというロシアの目標、『とっくの昔の失敗』 米国務長官」
(2) そもそもアメリカという国は、戦う相手の国の言い分に、まったく耳を貸さない国なのでしょうか。だから、自国=絶対善、相手国=絶対悪が信じられるのかもしれません。
(3) 「ウクライナ、ロシアによる占領地域の半分を既に奪回=米国務長官
(4) 「ウクライナはロシア支配領土の『61%奪還』・・・

【追記】
ブリンケン氏の発言に対しては、昨年7月1日公開の「ロシアの戦略的な目標?」で、既に批判していました
それを書いたことすら忘れていました。
(2023・8・13)