カホフカダム破壊と焦土作戦

雑誌『月刊 Hanada』で、ジャーナリストの堤尭氏と久保紘之氏が、毎月「蒟蒻問答」という対談を行っています。その8月号で、堤氏は発言しています。

「さきごろカホフカ水力発電所のダムが破壊されて、下流一帯が水に飲まれてしまった。ロシアとウクライナ、どちらがやったかわからないとされるが、古来、堤防を破壊して水の助けを図るのは、逃げる側がやるものだ。反攻に転じるウクライナ側がやることじゃない。かつて日中戦争のおり、日本軍に追われた蒋介石が揚子江の堤防を切って重慶に逃げおおせたことがある」(128頁)

6月21日公開の記事「戦争でインフラを攻撃するのは実効支配していない側である」で、その例外、実効支配している側がインフラを攻撃する場合として、焦土作戦を挙げました。

堤氏曰く、「古来、堤防を破壊して水の助けを図るのは、逃げる側がやるものだ」。
これは、焦土作戦のことを意味しています。

しかし、カホフカダムの事例では、ロシアは今後も実効支配するつもりなのですから、つまり、「逃げる側」ではないのですから、焦土作戦を行う必要はありません。

なので、カホフカダムの破壊は、<戦争でインフラを攻撃するのは実効支配していない側である>の原則から、やはり、ウクライナがやったと考えるのが自然です。