1.絶対的な勝敗
ウクライナ侵攻では、ウクライナが勝利するだの敗北するだの、ロシアが勝つだの負けるだの、あれこれ語られています。
ところで、戦争の勝敗には、二通りの考え方があるでしょう。
絶対的な勝敗と相対的な勝敗です。
戦争当事国・諸国が、戦争目的を達成した場合は、絶対的な勝利であり、達成できなかった場合は、絶対的な敗北です。
たとえば、もしウクライナの目的がクリミアの奪回であり、ロシアの目的がドンバスの併合であり、双方がそれを実現できたら、両者とも勝利です。双方の戦争目的が、バッティングしなければ、原理上、両者とも勝利ということはありえます。
けれども、ウクライナの目的はクリミアの奪回であり、ロシアの目的がドンバスの併合であるとして、もしウクライナはドンバスを取り戻すことはできたけれども、クリミアはできなかったなら、他方、ロシアもクリミアは確保できたけれども、ドンバスは併合できなかったなら、両者とも絶対的な意味で敗北だということになります。
2.相対的な勝敗
それに対して、たとえば、ウクライナの目的が、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンの四州の奪われた土地を取り戻すことだとします。一方、ロシアの目的は、それら四州の併合であるとしましょう。とすると、両者の戦争目的は、もろに重なります。
その場合、戦争の結果、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャの三州をウクライナが取り戻し、ロシアがヘルソンだけしか併合できない場合、相対的な勝敗論で言うなら、ウクライナの勝利であり、ロシアの敗北だということになります。
逆に、ウクライナが四州の内、ヘルソンだけしか取り戻すことができず、後の三州はロシアに奪われたなら、ウクライナの敗北、ロシアの勝利だということになります。
現状は、クリミアを支配していますし、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン各州の大きな部分をロシアが制圧しているので、この状態で戦争が終わり、新しい国境線が引かれれば、相対的な意味での勝敗を言うなら、ロシアの勝利だということになります。
3.相対的な勝利を目指して
実際には、ウクライナの戦争目的は、昨年2月24日以降に奪われた四州の領土とクリミアの奪還であり、ロシアの目的は、ウクライナのNATO加盟阻止=中立化・緩衝国化、ウクライナの脅威の除去(非軍事化)、ドンバスの解放、反ロシアのゼレンスキー政権の打倒であるとするなら(「ロシアの侵攻目的」)、現状ウクライナにしろ、ロシアにしろ、絶対的な勝利は望めそうにありません。
残るのは、相対的な意味で、どちらが勝利するのか、どちらが敗北するのか、それとも引き分けで終わるのか(一方にとっては引き分けでも、他方にとっては勝利または敗北かもしれませんが)、です。
双方とも、相対的な勝利を目指して頑張っています。
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