国際社会の理想と現実

1.国際社会の理想

国際社会では、麗しい理想が謳われます。

・すべての主権国家は平等である。
・各国は国際法を遵守しなければならない。
・主権国家はどこの国と軍事同盟を結ぶのも自由である。
・力による現状の変更は、行ってはならない。

2.国際社会の現実

しかし実際は、下記の通りです。

・すべての主権国家は必ずしも平等ではない。
・国際法を守らない=破る国もある。国際法を破る国がすべて非難されるわけではない。
・主権国家だからといって、どこの国と軍事同盟を結ぶ自由である訳ではないし、また、主権国家だからといって、軍事同盟はおろか、国際連合に加盟する自由がある訳ではない(台湾)。
・時に、力による現状の変更を行う国もある。

これが、国際社会の現実です。

3.理想=現実ではない

国際社会では、理想と現実はしばしば一致しません。
しかし、昨年以降のロシアによるウクライナ侵攻で明らかになったのは、理想と現実の区別ができない人、理想を現実だと錯覚する人、理想を容易に実現できると信じる人、が物凄く多いということです。

理想と現実には乖離があります。そして、確かに現実を理想に近づけようとすることは必要ですが、それにも、おのずから限界があるということを理解しなければなりません。

4.上位の主権国家と下位の主権国家

理想主義者は、「すべての主権国家は平等である」と信じていますが、現実の国際社会では、主権国家は平等ではありません。それを、ジョージ・オーウェル風に言うなら、

すべての主権国家は平等である
しかし、ある主権国家は、ほかのものよりも
もっと平等である

が実態です。

国際社会には、上位の主権国家と下位の主権国家があります。
前者の現実的表現が、国連安保理常任理事国であり、核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有を認められている諸国です。そして、彼らは、時に国際法を破ることも、時に力による現状の変更を行うことも、国際社会で追認されてきました。
因みに、核兵器を保有するNPTの未加盟国にも、インドやイスラエルのように、上位の主権国家もしくはそれに準ずる国があります。

この度のウクライナ侵攻で明らかになったのは、ロシアだって「ほかのものよりも もっと平等である」上位の主権国家だったはずのに、ウクライナ侵攻では、西側から総スカンを食らっています。
なぜでしょうか。どうやら西側には、次のような不文律があるらしい。

すべての主権国家は平等である
しかし、ある主権国家は、ほかのものよりも
もっと平等である
ただし、「ある主権国家」の中のロシアだけは、「ほかのもの」と同様に「平等である」