ウクライナ侵攻における善悪論と勝敗論

ロシアによるウクライナ侵攻について。

第一。ロシアはウクライナを侵略した。

第二。第一から、ロシアは悪であり、ウクライナは善である。

第三。故に、この戦争でロシアに勝たせてはならないし、ウクライナが勝たなければならない。

これが、わが国を含めた西側諸国の、多数派の意見です。

しかし、これまで何度も述べてきましたが、戦争における善悪と勝敗は無関係です。

第一。戦争は強い側が勝ち、弱い側が負ける。

第二。戦争は正しい側・善の側が勝つわけではない。

第三。戦争では、正しい側が勝つ場合もあるし、負ける場合もある。一方、不正義な側が勝つ場合もあれば、負ける場合もある。

これが、戦争の必然性であり、原則です。
もっとも、どちらの側が正義の側であり、どちらが不正義の側であるのか、不明確な場合が多いですが。

とにかく、戦争における善悪論と勝敗論は分けて考えなければなりません。両者は別個に考察されなければなりません。

ところが、昨年2月24日に戦争が始まってから、一年以上が経っているのに、いまだに両者を区別できない人たちが多い。上はいわゆる識者から、下はヤフコメ民まで。
なぜヤフコメ民たちは、それらの区別ができないのでしょうか。識者たちが、両者をちゃんと分けて考えていないからです。

識者にしろ、ヤフコメ民にしろ、その多くが、
侵略したロシアは悪である→ロシアに勝たせてはならない→ウクライナに勝って欲しい→ウクライナは勝てるはずだ→ウクライナは勝つに違いない、
という善悪論と勝敗論を混淆させた、一元論的思考に陥っています。
やれやれ。

【勝敗論】

第一。アメリカを含むNATO諸国が直接参戦(軍事支援や経済制裁は、間接参戦)すれば、ウクライナの勝ち。但し、その場合は、第三次世界大戦もしくは核戦争に発展する可能性あり。

第二。アメリカを含むNATO諸国が直接参戦しなければ、ほぼロシアの勝ち。

第三。アメリカを含むNATO諸国は、直接参戦しそうにない。故に、ほぼロシアの勝ち。
もっとも、勝ちと言っても、圧勝ではなく、辛勝である。

補足。開戦後一年が経過して、負けないと判断したから、中共はロシアに接近した(3月20日の習近平氏訪露)。もし負けるとの予想なら、中共はロシアと距離をおいただろう。

【善悪論】

第一。9・11テロで、テロリストは動機を明確にしていないのに、少なからぬ人々は、彼らを忖度した(「世界でなぜ嫌われるのかアメリカは反省しなければならない」のたぐいの言説)。
一方、この度の侵攻では、ロシアは動機を明示しているのに、多くの人々はそれを読まずに非難する。

第二。侵攻を否定するにせよ、肯定するにせよ、その善悪を論じるなら、最低でも、昨年2月24日侵攻の直前にプーチン大統領が行ったテレビ演説を読まなければならない。

第三。それによれば、ロシアの侵攻目的は、
1)「ロシアの重要な安全保障問題」
2)「ドンバスの悲劇的な事態」
に対処するためである。