なぜ西側諸国以外は冷ややかなのか

1.西側は世界から孤立している?

昨年2月24日、ロシアはウクライナに侵攻しました。ロシアの行動は国際法違反だとして、アメリカを含めたNATO諸国、その他豪新日韓台など西側諸国は、ロシアに対しては経済制裁、ウクライナに対しては(軍事)支援を行っています。
しかし、アジア、アフリカ諸国などは、西側諸国の制裁や支援の呼びかけに応じない国が多い。

昨年3月2日、ロシアを非難し、ウクライナからの即時撤退を求める国連決議が採択されましたが、193の加盟国の内、141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権でした。
ところが、4月7日の、国連人権理事会における、ロシアの理事国資格を停止させる決議では、賛成93か国、反対が24か国、棄権が58か国で、3月の決議よりも反対と棄権が増えました。
さらに、11月14日の、軍事侵攻による損害の賠償をロシアに求める決議案の採択が行われ、賛成は94か国、反対は14か国、73か国が棄権しました。

アジア・太平洋地域の国で、対露制裁を行っているのは、日韓台シンガポール、それと豪新くらいらしい。

イタリアのベルルスコーニ元首相は、テレビで発言したそうです。
「たしかにロシアは西側から孤立したが、西側も残りの世界から孤立した」

実際に、孤立しているかどうかはともかく、世界には西側に同調しない国が少なくありません。それは、どうしてなのでしょうか。

2.西側のダブル・スタンダード

知的な不正直あるいは不誠実は、言行のダブル・スタンダードとなって表れることが多い。
ウクライナ侵攻に関して、国際法(国連憲章4条2項)違反だと非難されていますが、では国連憲章が発効された1945年10月24日以来、それに違反したのは、このたびのロシアだけでしょうか。そんなことはないでしょう。ロシア以外の国も違反したことがあるでしょう。それなら、これまでそのような国に対して、国連あるいは西側諸国は、経済制裁を、一方、そのような国から侵略された国に対して、軍事支援を行ってきたでしょうか?

勿論、否でしょう。とすれば、なぜ今回だけ対露制裁、対宇支援を行う(行うべきな)のでしょうか。過去に国際法に違反した国と、ロシアに対する態度は、明らかに別の基準が適用されています。

昨年4月にインドネシアで、主要20か国・地域(G20)が開催されましたが、それに関する、次のような記事があります。

「東南アジア情勢に詳しい外交筋は、現場の世論をこう説明する。

『インドネシアの国民は必ずしも親露ではないが、欧米のこれまでのアフガニスタンやイラク、パレスチナ問題への対応はダブルスタンダードで到底納得できない、という感情がある。その裏返しとしてロシアにくみする傾向がある』

主要なSNS(ネット交流サービス)ではロシアへの支持が7~9割に上っており、インドネシア政府は世論を無視できない。こうした事情を考慮せずにG20からのロシア排除を要求する欧米の姿勢について、G20の成功を期するインドネシアは『いじめだ』と不快感を示すこともあるという」(1)

昨年12月に、朝日新聞は、パレスチナ自治政府のアッバス議長にインタビューをしました。そこで氏は、

「ロシアのウクライナ侵攻に伴う占領や併合が批判され、ウクライナには多くの欧米諸国から大規模な支援が集まっているのに対し、イスラエルによるパレスチナの占領は長年放置されているとして、『国際社会にダブルスタンダード(二重基準)がある』と批判」しました(2)。

3.西側のもう一つのダブル・スタンダード

昨年の国連決議の反対や棄権を見ると、ウクライナ侵攻で、ロシアを非難する西側に対して、西側以外の諸国は、冷ややかに見ているというのが分かります。
その理由として、前節で述べたように、アフガニスタン、イラク、パレスチナ問題に関しての、西側諸国のダブル・スタンダードがあります。が、更にそれとは別に、西側以外の諸国は、かつて西側(その中心は欧米)諸国に侵略され、植民地にされたという気持ちもあるでしょう。

ウクライナ侵攻において、侵略した側=ロシア=悪、侵略された側=ウクライナ=善であるなら、かつて非欧米の諸国は、欧米諸国に侵略されたわけですから、欧米諸国=悪、非欧米諸国=善、のはずです。
では、当時、欧米諸国で、その侵略のゆえに、同じ欧米の国に対して経済制裁を、欧米諸国から侵略された国に対して、軍事支援を行った国があったでしょうか?

非欧米の諸国を、かつては侵略し、植民地にして平然としていたくせに、今手の平を返したように、ウクライナを侵略したからと言って、ロシアを非難し、袋叩きにしている。しかも、欧米諸国の中には、かつて自分たちが侵略したアフリカ諸国に対して、対露非難を呼びかける厚顔無恥な国もあります(3)。

ダブル・スタンダードにもほどがある、馬鹿も休み休み言え!
そのような気持ちがあるから、西側以外の諸国は、西側に同調しないのだと思います。

(1) https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220510/pol/00m/010/025000c
(2) https://www.asahi.com/articles/ASQDS0455QDMUHBI04W.html
(3) https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AF%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E4%BE%B5%E6%94%BB%E9%9D%9E%E9%9B%A3%E3%82%92-%E4%BB%8F%E7%8B%AC/ar-AA16kM7n

【追記】
ただ私は、百年二百年三百年前の先進国による、後進国に対する侵略や前者における奴隷制などを、現在の私たちが批判するのは、無意味だと考えます。それが当時の常識だったからです(「道徳の不遡及の原則のすすめ」)。