《ウクライナは自力では達成できない目標を掲げ、アメリカは口では「ウクライナが戦争で勝利できるよう支援する」と言います。しかし、実際は、ウクライナが目的を成就できるほどの軍事支援を、西側は行っていません。なぜでしょうか》
ロシアの侵攻に対する、ウクライナの反攻の目的は、ゼレンスキー大統領も述べているように、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン四州の奪われた領域とクリミアを取り戻すことでしょう。
昨年12月21日の、ゼレンスキー宇大統領とバイデン米大統領との会談で、後者は述べました。
「米国は必要な限り、勇敢なウクライナの人々がロシアの侵略から確実に国を守れるよう尽力する」(1)
「確実に国を守れるよう」と言っていますが、「確実に占領地を取り戻せるよう」とは、言っていません。
実際に、ウクライナが目的を達成できるだけの軍事支援を、アメリカ他西側は行っていません。
これまでの紛争の経緯を見ても分かるように、西側がやっているのは、戦力ならぬ支援の逐次投入です。ウクライナがロシアと一進一退を演じる程度の軍事支援しかしていなくて、とてもウクライナが占領地を奪還できるだけの質と量ではありません。
アメリカは、本気でウクライナが占領地を取り返すまで支援を続けるつもりなのでしょうか。ゼレンスキー大統領は本当に、そのすべてを取り返すことができると信じているのでしょうか。
ウクライナにとって、アメリカは命綱ですから、はっきり言いませんが、心の中では、米国を含めて西側は、口先ばかりだと思っているのではないでしょうか(2)。
先の会談で、「ゼレンスキー大統領と私は(ウクライナの平和について)同じビジョンを持っている」とバイデン大統領は述べましたが(3)、ウクライナが目的を成就することができるほどの支援を、アメリカが行っていないところから判断すると、米国の真の目的は別にあって、ウクライナとは別のビジョンを持っているのではないかと疑っても、不思議ではないでしょう。
たとえば、アメリカの目的は、ウクライナに勝たせること、にあるのではなく、ロシアに勝たせない、ことにある? ロシアからすれば、自国を潰すために、西側はわざと戦争を長引かせているように見えるでしょう。
では、アメリカの目的は、ロシアを破壊することなのでしょうか。
それも違うと思います。アメリカはそんな壮大な事業を、長期的に継続して行える国ではありません。国民の意識で、直ぐに政策がひっくり返る。
米国がウクライナへ逐次支援しか行っていない理由は、勿論第一は、ロシアとの戦争に発展させないためでしょう。しかし、第二は、明確な出口戦略を持っていないからではないでしょうか。その発言とは裏腹に、バイデン政権は、戦争なり、自国の支援なりを、どのようにして幕引きすべきなのか、分からない状態に陥っているのではないでしょうか。だから、対症療法的な、小出しの支援となっているのだと思います。
(1)朝日新聞、2022年12月23日付
(2)わが国では、政治家からヤフコメ民まで、口ではロシアを非難しながら、対ウクライナ支援を拡大させるような、立法措置を講ずるための活動は殆んど行っていません。
(3)https://www.donga.com/jp/article/all/20221223/3844843/1