頑張れ、ANN取材団 ウクライナ侵攻

11月25日、「ロシアのウクライナ侵攻の結末は? ー想定される3つのシナリオ 外交、変革、そして・・・」という記事が配信されました。「筆者」はANN取材団となっています。

ANNとは、ウィキペディアによれば、「オールニッポン・ニュースネットワークAll-Nippon News Network)は、テレビ朝日(EX)をキー局とする、日本民放テレビ局ニュースネットワークである。略称としてANN(エーエヌエヌ)が使用される[PR 1]」のことです。

記事の冒頭に、「ウクライナの軍事的勝利がすぐに起こる確率は高くない」との、11月16日のミリー米統合参謀本部議長の発言を引いた後、書いています。

「ウクライナの軍事的勝利も、ロシア軍の撤退も、すぐには起きないというのなら、今後どうなっていくのか。考え得る3つのシナリオとその実現性を検証した」

そして、ANN取材団が挙げた3つのシナリオとは、
1.外交による解決
2.ロシア国民による変革
3.クレムリンの内部崩壊、です。

1つ目のシナリオは、「外交による解決」ですが、ウクライナとロシアのどちらが、どの程度譲歩するだろうか、すべきかについては、全く触れられていません。また、「ロシアの『停戦交渉』の課題は国内の説得」とあるのですが、ウクライナの停戦交渉の課題は何なのか、については一言もありません。後者の停戦交渉には、「国内の説得」は必要ないのでしょうか。
もしそうだとするなら、ロシアよりもウクライナの方が、民主主義国家ではなく、権威主義国家だということになりませんか?

この記事には、最も可能性の高いシナリオが抜け落ちています。そのシナリオとは、今後ロシアが侵攻地を、あるいは、ウクライナが反攻地を、各々が多少拡大することがあっても、おおよそ現状のままロシアとウクライナの支配地域が固定化されるというものです。いわば、両者の境界線が、朝鮮半島の38度線のようなものになるだろうという予想です。

同記事のシナリオ2、3として、ロシア国民による変革、クレムリンの内部崩壊が挙げられていますが、そして、後者では最悪ロシアで内戦が発生するかもしれないと記されています。しかし、国民による変革なり、政権の崩壊がありうるのは、なにもロシアだけではありません。ウクライナだって、その可能性はあります。
不思議なのは、ウクライナにおけるそれらの可能性には、全く言及がないことです。

「侵略に抗議して、5月に職を辞したロシアの元外交官のボリス・ボンダレフ氏は10月、アメリカの外交専門誌フォーリン・アフェアーズに寄稿し、ロシアが戦争に負けてくれば、政権内で責任の押し付け合いが始まり、プーチン体制の崩壊が始まると指摘している」

しかし、それに関しても、ウクライナだって同じでしょう。成果(戦果)が出せなければ、ゼレンスキー大統領の失脚だってありえます。けれども、この記事にはその可能性が全く取り上げられていません。

ウクライナとロシアに対する認識が、どうしてここまでアンバランスなのでしょうか。
ANN取材団は、反露で凝り固まっているか、思考力が低いないしは想像力が欠如しているからだと思わざるをえません。
彼らが提起した3つのシナリオが当たるかどうかではなく、その3つのシナリオしか、彼らが提起しえないことが問題です。

3つのシナリオのうち、どれか一つがまぐれ当たりでもしない限り、ANN取材団はこの不出来な記事を、何れ自ら抹消せざるをえないでしょう。