ノルドストリームを破壊したのは誰か

遅ればせながら、9月26日に破壊されたノルドストリームについて、少し述べます。

11月22日に配信された、讀賣新聞のオンライン記事「『海底の9・11』か、ガス漏れパイプラインの区間にクレーター・・・TNT爆弾使用の可能性」のコメント欄に、ninというネームの人が書いています。

「いまだにヤフコメでは根本的に勘違いしてる人がいるけど、これ『ロシアの外貨獲得を支えているロシアのパイプライン』だからね。
ロシアがこのパイプラインを止めたければ元栓閉めればいいだけな上に閉めたらロシアの財政が干上がる。壊されて困る筆頭がロシアなのよ。
んで、購入者であるドイツも考えにくい。(以下略)」

ノルドストリームがロシアとドイツを結び、ロシアの収益と、ドイツ他のエネルギー需要を満たしている点、犯人はロシアとドイツ以外のどこかの国または組織(ロシアの反体制派を含めて)だと考えるのが自然です。そして、露独以外の、そのような破壊工作を行う能力を持つ国等だと考えられます。

ノルドストリームを破壊したのはロシアなどという人たちは、余程反露感情に駆られているのでしょう。しかし、そう言うのなら、何らかの証拠、は無理にしても、ロシアが破壊するに足るだけの合理的な理由(不合理な理由を挙げる人はいますが)を示して欲しいものです。

【おすすめ記事です】
https://mag.minkabu.jp/mag-sogo/25178549558/

佐藤優氏と副島隆彦氏の対談です。副島氏は、ちょっと際物なんですが。通俗的ではないウクライナ侵攻論です。全四回分あります。

検証記事不在の不可解 ウクライナ侵攻

1.本当にロシアは原発を攻撃したのか

毎日新聞のネット記事「ザポロジエ原発、砲撃でまた外部電源喪失 発電機燃料は15日分」が、11月4日配信されました。その記事によれば、

「ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは3日、ロシア軍が占拠する南部ザポロジエ原発の送電線が損傷し、外部からの電力供給が2日に完全に喪失したと発表した。ロシア軍による砲撃が原因としている。(中略)
ロシアによる2月のウクライナ侵攻後、ザポロジエ原発はこれまで何度も外部電源の喪失と復旧を繰り返している」

その後、同月5日に復旧しましたが、ザポリージャ原発は今年の3月4日から「ロシア軍が占拠」しています。8カ月以上も前から占拠しているのですから、もしロシア軍が原発を攻撃する意思があるのなら、とっくにそれを破壊しているでしょう。
ロシア軍の目の前に原発の施設があるのですから、破壊は容易なはずです。それとも、目の前の原発を破壊できないくらい、ロシア軍の射撃の命中精度は低いのでしょうか(笑)。

ロシアは9月30日に、ザポリージャ州を含めて、ルハンスク、ドネツク、ヘルソンの四州の併合を宣言しましたが、ということは、ザポリージャ原発はロシアの所有となったわけですから、なおさら同国が破壊する理由がありません。

10月11日に、「誰が原発を攻撃したか ウクライナ侵攻」という記事を公開し、自分なりにザポリージャ原発攻撃に関する解釈を論じました。

その中で述べたのとは別の、ウクライナ寄りの解釈を、もう一つしてみます。
3月4日以降原発を占拠しているのはロシア軍で、働いているのはウクライナ人である。そのウクライナ人職員が、言うことを聞かないから、彼らを脅すために、ロシア軍が施設の一部へ砲撃を加えている・・・・

今述べた仮説と、先のブログ記事で述べた仮説の中に真実はあるのでしょうか、それとも、それらで提示した仮説はすべて間違っていて、本当は別の真実があるのでしょうか。しかし、何が真実なのか分かりません。それを明らかにする報道がないからです。
誰がザポリージャ原発を攻撃しているのか、に関する検証記事がないのは、どうしてでしょうか。

2.プーチン大統領重病説

2月24日ロシアがウクライナに侵攻して以来、プーチン大統領の病気説を何度もネットで目にしました。すい臓がんだの、パーキンソン病だの、血液のがんだの、前立腺がんだの。
しかし、最近はその手の情報を見なくなりました。ガセネタだったのでしょうか。

それがガセなのか、真実なのか、あるいは、それらの情報源がどこなのかを検証する記事を見たことがありません。どうしてなのでしょうか。

3.なぜ検証記事がないのか

ジャーナリストがその職に就く動機は、真実を知りたい、とか、真実を自分の目で見たい、とかではないのでしょうか。そして、世界にはジャーナリストはいくらでもいるはずです。それなのに、ザポリージャ原発に対する攻撃にしろ、プーチン氏の重病説にしろ、どうして検証記事がないのでしょうか。摩訶不思議だと言わざるをえません。

私の仮説はこうです。
西側の政府同様、ジャーナリストも、彼らの記事を掲載・配信する情報媒体も、<ウクライナ=善、ロシア=悪>という思考に凝り固まっていて、暴支ならぬ暴露膺懲のためなら、第一、ウクライナにとって不利な情報は報道しなくて良い(ザポリージャ原発に対する攻撃の真相)、第二、ロシアにとって不利な情報は、たとえ真偽不明でも報道しても良い(プーチン大統領病気説)、という姿勢をとっているからではないでしょうか。
ロシア国民を動揺させるような、同国内部に対立を引き起こさせるような、そして、プーチン政権を倒す者が出現するのを促すような、情報はたとえ嘘でも報道が許される。

ザポリージャ原発に対する攻撃、プーチン大統領重病説、その他にも同様な事例はあるでしょうが、そのような事柄に関する検証記事がないのは、ジャーナリストや媒体も、情報を通じての、彼らなりの対宇支援や対露制裁を行っているからではないでしょうか。

【追記1】
11月15日、ポーランド東部のプシェボドフにミサイルが着弾し、2人が死亡しました。
それについて、ゼレンスキー大統領は「15日夜の演説で、『NATOの領土をミサイル攻撃する。これは集団安全保障に対するロシアのミサイル攻撃だ。重大なエスカレーションだ。行動が必要だ』と訴えた。『私たちがずっと警告してきたことが今日起きた。テロはウクライナ国境の内側にとどまるものではない』とも主張した」(11月16日付朝日新聞夕刊)そうです。それに対して、そのミサイルはウクライナ軍の地対空のそれだとの判断を、アメリカのバイデン大統領、NATOのストルテンベルグ事務総長、ポーランドのドゥダ大統領が示しました。
「ウクライナにとって不利な情報は報道しなくて良い」という不文律があるにしても、さすがにNATOの参戦につながりかねないので、アメリカ他の首脳は、速やかかつ正直にウクライナ軍の責任であることを、発表したのだと思います。

【追記2】
下記の引用文の筆者はブロガーで、基本陰謀論者なので、私はあまり評価をしていないのですが、引用個所に関しては、書いていることは正しいと思います。

「ザポリージャ原発の査察の時も、査察を歓迎し、春先から延々と交渉をしていたのはロシア側でした。ウクライナで原発施設へ査察団を警護しながら案内したのは、ロシア側です。IAEAの査察団は、出発前は『誰が原発を攻撃しているか、はっきりさせる!』と大見えを切り、帰ってきたら『どっちか分からない』と言い、どっちからロケットが飛んできているかも口を濁したままです。ちなみに、ザポリージャ原発はドニエプル川に沿って建っているのですが、施設を背中にし川に向かって立ったとして、ロケットが川の向こう側から飛んできたら、それはウクライナ側が攻撃している可能性が大です。そこはウクライナが握っている場所ですから、、、。だから、『誰が』と明言せずとも、『どっちから』を言ってくれればねえ、、、と、ブログ主は思ったんです。丁度査察団がいるときも、ロケットが飛んできていたそうですから。それが出来ないというなら、IAEAがご指名したくない誰かがロケットを打っているって事になりそうです。」

【追記3】
検証(後追い)記事がないのは、その他、第一、2022年9月26日にノルドストリームが破壊された事件。第二、当投稿の【追記1】で書いた事件に対するゼレンスキー政権の公式見解、でしょうか。(2023・1・3)

アメリカの目的 ウクライナ侵攻

現在アメリカは、金魚のフン諸国を従えて、対露制裁と対宇支援を行っています。
金魚のフン国家とは、NATO諸国や日本のように、アメリカの主張に唯々諾々と従う国のことです。もしアメリカが突然方針を転換し、制裁や支援を止め、ロシアとの対話を開始し、領土の点で、ウクライナに譲歩を求めたとしたらどうでしょうか?
フン諸国は、それにも拘わらず、対露制裁や対宇支援を継続しうるでしょうか。継続できないでしょう。できないがゆえに、欧日は米国の金魚のフン国家です。

アメリカはなぜ対露制裁や対宇支援を行っているのでしょうか。ロシアによるウクライナ侵攻が、道徳的に許せないからでしょうか。

ウクライナの目的は、2月24日以降に奪われた土地とクリミアを取り戻すことでしょう。ではアメリカの目的は、ウクライナのそれと同じなのでしょうか?
ウクライナがその目的を達成するまで、米国は支援を続けるのでしょうか。クリミアは要衝で、ロシアが手放すとは思えません。アメリカは、ウクライナがクリミアを奪い返すまで、たとえ核兵器使用や第三次世界大戦に発展しようとも、戦いを支えるつもりなのでしょうか。

これまでの行動(自らは参戦せず、かつ支援の逐次投入)を見ていると、アメリカに明確な目的=出口戦略があるようには見えません。目的が不明確なまま、ズルズルと支援を続けている。要するに、手段が目的化しているのではないでしょうか。手段が目的化した結果、次善の目的が、ウクライナを勝たせる、はなく、ロシアを勝たせない、になっている。それを、バランス・オブ・パワーならぬバランス・オブ・ウォーによって、実行しているのではないでしょうか。

ウクライナの目的と、たとえば、わが国の主戦論者=正義派の希望することは同じかもしれません。しかし、それとアメリカの次善の目的は一致しているのでしょうか。前者と後者は同床異夢なのかもしれません。