ロシアによる四州併合とウクライナ

ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナの、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンの四つの州をロシアに併合すると宣言しました。
本来なら、それらの州の全域を占有してから、宣言したかったのでしょうが、既存のロシア軍の戦力・兵力では無理なので、戦果を確保するために、併合宣言を急いだのでしょう。
同21日に発令した部分動員は、それらの州とクリミアの守備固めのための、兵員の増強だと考えられます。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチン氏の併合宣言の後、同日NATOへの正式加盟の申請を明らかにしました。
もっとも、アメリカもNATOも、ウクライナの早期加盟には慎重な姿勢を示しています。

プーチン大統領は同じ30日、ウクライナとの停戦交渉の用意があると、表明しました。戦況や国内の厭戦気分などを考慮して、しかも、最低限の戦果を確保したので、そろそろ特別軍事作戦を切り上げたいと考えてのことでしょう。

それに対して、ウクライナはどう行動するのでしょうか。
ゼレンスキー大統領は、クリミアを含めたすべての占領地を奪還すると言っていました。四州とクリミアのロシア領化が既成事実になってしまえば、将来NATOに加盟し、力をつけてから、取り戻そうと思っても、その時はウクライナの方がロシアを侵略したということになってしまいます。なので、早期に取り返さなければなりません。

しかし、占領地を取り戻すには、ウクライナとロシアの力の差が、ウクライナ(+NATO)>ロシア(ウクライナと同国を支援するNATOの力はロシアのそれよりも強い)にならなければなりません。
そのような力関係になるだけの支援を、近いうちにNATO諸国が行いうるのでしょうか。どうも、行いうるとは思えません。

ロシアの停戦の提案に応じ、四州他のロシアへの割譲を認めれば、国民の失望を招くことになりますし、かと言って、この先継戦しても(最近は、ウクライナ軍も健闘していますが)、占領地のすべてを取り戻せるとは思えません。そのようなジレンマに、ゼレンスキー政権は直面することになりそうです。けれども、これまでの経緯から、前者の選択肢はありません。

それでも、ウクライナは戦い続けるのでしょうか、それとも、南北朝鮮のような、戦闘のない戦争状態に、次第になって行くのでしょうか。

【折々の名言】
「夫婦の幸福は妻への降伏から」

雑誌『WiLL』11月号の、「安倍晋三命懸けの名セリフ」という記事より(192-193頁)。