ロシアの戦略的な目標?

ブリンケン米国務長官は、6月26日放送のCNNテレビで、「プーチン氏の戦略的目標は、ウクライナの主権と独立を奪って地図上から消し去り、ロシアに組み込むことだったと指摘」したそうです(1)。

はたしてロシアはそんなことを意図しているでしょうか。意図しているとして、同国はどこでそんなことを表明しているのでしょうか。

2月24日ロシアはウクライナに侵攻しましたが、当日のテレビ演説でプーチン氏は述べています。

「私たちの計画にウクライナ領土の占領は入っていない」(2)

6月7日には、ウクライナのEU加盟に対して、「われわれは全く反対していない。EUは軍事同盟ではない。経済連合に加入するのは全ての国が持つ権利だ」と発言しました(3)。

また、5月29日ラブロフ露外相は、ドンバス以外の地域に関しては、「自らの意思で未来を決めるべきだとの立場を示した」そうです(4)。

これらから言えるのは、ロシアはウクライナの併合を目的としていないということです。少なくとも、ウクライナの国としての生存権は認めています。
ただ、ウクライナがNATOに加盟するのは許せない、ドンバス地方におけるロシア系住民に対する、ウクライナ政府による攻撃は許せないというのが動機でしょう。

ウクライナの次にロシアが侵略するのはX国だなどとの説が、まことしやかに語られていますが、どのような根拠に基づいて、主張者はそのような発言をしているのでしょうか。
この度のウクライナ戦争で分かったのは、ロシアには自国の安全保障上重要ではない、あるいは、ロシア系の住民のいない地域へ侵攻する力はないということでしょう。

ブリンケン氏の発言を含めて、ロシアが言ってもいないことを言って、しかも、それを根拠に、同国を悪魔に仕立て上げ、非難する。どうかと思います。

ロシアが本心を隠していないとは言えませんが、少なくとも、宇米欧の指導者よりも、ロシアの指導者の発言の方が、ブレが少ないように思います。

(1)https://news.yahoo.co.jp/articles/09e4973106b6e59edb3e3708a6304d1ccf573266
(2)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513641000.html
(3)https://news.yahoo.co.jp/articles/5ca68dd396c99d2708414e555df02399e8203cb9
(4)https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-donbas-lavrov-idJPKBN2NF0L5