経済制裁と軍事支援は何のため?

人々は、自分が乗っている列車の終着駅がどこなのか、分かっているのでしょうか。

1.その政治目的

またしても、クラウゼヴィッツを引用します。
「戦争は他の手段をもってする政治の継続にすぎない」
それを応用するなら、経済制裁および軍事支援は、他の手段をもってする戦争の継続にすぎない、となります。ということは、経済制裁および軍事支援は、他の手段をもってする政治の継続でもある、ということです。

「戦争は一つの政治的行為である」。
もしそうなら、経済制裁にしろ、軍事支援にしろ、「一つの政治的行為」なのですから、何らかの政治目的を目指しているはずです。
経済制裁や軍事支援が行われるのなら、ある政治目的を達成するための手段として、それらが行使されるはずです。

2月24日、ロシア軍はウクライナへ侵攻しました。それ以降、ウクライナはロシアに抵抗しています。
欧米(EUおよびNATO)そしてわが国は、ウクライナを支援するために、ロシアに対して経済制裁を、そしてウクライナに対して軍事支援を行っています。
それでは米欧日は、何のために、経済制裁なり、軍事支援なりを行っているのでしょうか。その政治目的は何なのでしょうか。

ロシアに対し、ウクライナへの侵攻を止めさせるためなのでしょうか。
ロシアでクー・デターなり、民衆の反乱なりを起こさせて、プーチン政権を転覆するためなのでしょうか。
プーチン政権よりもより増しな、できれば民主的な政権を作るためなのでしょうか。

ある政治目的を実現するための手段として、経済制裁や軍事支援を行っているはずですが、米欧日にそれについての共通理解はあるのでしょうか。

2.目的と手段

ドイツは、1月26日軍用ヘルメット5000個を供与すると発表して、ウクライナの失望を買いました。
ところが、2月24日侵攻が開始された途端に、ショルツ首相は、2月27日連邦議会で演説し、「『ドイツ連邦軍を、確実に祖国を守ることができる近代的な軍隊に作り替える』ために、『防衛予算が国内総生産(GDP)に占める比率を2%超に引き上げ、これを維持する』と明言した」そうです(注)。

侵攻後米欧日は、ロシアに対する経済制裁とウクライナに対する軍事支援の強化を段階的に進めました。米欧日は、政治目的は明確だけれども、相手の出方に応じて手段を変えているのでしょうか。
しかし、ドイツのブレ方が象徴的ですが、どうも当事国に目的と手段が明確に意識されているとは思えません。何らかの明確な政治目的を実現しようとしているというよりも、とにかくロシアに対して懲罰を与えなければならないとの情念に駆られて、経済制裁や軍事支援を行っているように見えます。

3.たいてい計算通りに行かない

湾岸戦争(1991年)はいくらか増しでしたが、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争他、第二次大戦後の軍事行動は、アメリカの思い通りにはなっていません。唯一の超大国が軍事力に物を言わせて取った直接的な行動でさえ、思い描いた通りにはなっていません。
軍事力を用いてでさえそうですから、それを用いない間接的な経済制裁や軍事支援で、米欧日が期待する結果が得られるのでしょうか。

経済制裁や軍事支援で、
ウクライナに対するロシアの行動を止めさせることができるのでしょうか。
クー・デターなり、民衆の反乱なりを起こして、プーチン政権を転覆させることができるのでしょうか。
転覆させた後、プーチン政権よりも増しな政権が生まれるのでしょうか。
その政権は、受け継いだロシアの膨大な核兵器をコントロールできるのでしょうか。

ウィキペディアの「経済制裁」には、次のような記述があります。

「1930年代には経済制裁の結果、イタリアや日本を追い詰め日独伊三国同盟を締結させた例もある。経済制裁が期待した効果を生み出すとは限らない」

4.その行き着く先

侵攻を、予想も予防もできなかったリーダーたちが主導する経済制裁や軍事支援という矢によって、平和という的を射ることができるのでしょうか。
勿論、瓢箪から駒、思いがけず良い結果が得られるということはありえます。しかし、経済制裁を含めた戦争は、往々にして、誰も予想しなかった結果が生まれるというのも歴史の教訓です。

経済制裁や軍事支援によってロシアを屈服させ、来るべき対中封じ込めに同国を参加させようとの長期的な目論見に従っての行動なら良いのですが、ベトナム戦争以下で失敗をした米国に、そんな長期的な戦略は期待できません。

米欧日は、経済制裁や軍事支援の強化へ邁進していますが、それらの首脳は、その結果を「計算」しえているでしょうか。とてもそうとは思えません。

<自国側と相手国側をチキンレースに追い込むのは愚かな政治指導者である>

経済制裁や軍事支援イケイケ、ウクライナ頑張れ!が世の大勢ですが、それを推進する人たちや、それに喝采を送っている人たちは、その行き着く先が分かっているのでしょうか。

それは、戦争の拡大や飛び火、第三次世界大戦に発展することはないのでしょうか。ウクライナ戦争は、ウクライナ・NATO連合対ロシアの様相を呈していますが、もし戦争が拡大した場合、宇露の二カ国だけではなくその他の国(民)も被害をこうむることになります。
それを危惧する人たちが、両国の早期の妥協と停戦を求める和平論者になり、それを危惧しないイケイケ派が主戦論者になっているようです。

【追記】
便意兵ー西野法律事務所」という記事から引用します。

「『便衣』とは平服という意味であり、『便衣兵』と呼ばれるものには2種類あります。
1 一般市民が武器を取って抵抗するもの
2 軍隊が一般市民に偽装して作戦を行うもの」

普通、便衣兵とは2の意味で用いられますが、ウクライナのブチャで起こった虐殺は、1を原因として起きたもの、ゲリラとか非合法戦闘員の問題だと思われます。
(キーウに潜入した報道カメラマンが見たもの)

【参考記事です】
1.https://news.yahoo.co.jp/articles/94fac36da997e27c638e6407b9afcc148fafa22f?page=2
2.https://news.yahoo.co.jp/articles/7be3f44be5f08d47c1278ee360d08da807ee3d7d

アメリカの言い草には呆れます。
やはり停戦よりも継戦で、ロシアの弱体化を狙っているのでしょうか。
もっとも、米国にはそのような長期的な戦略を立案・実施する能力はないとは思いますが。
(2022・6・11)