「都合の良い右派」といったタイプの論客がいます。
都合の良い、とは左派にとって都合が良いという意味で、左派にとって都合の良い右翼、左派にとって都合の良い保守といった種類の人たちのことです。
左派の論客が右派を批判するよりも、右派の論客に同じ右派を批判させる方が、インパクトがありますし、右派の内部に動揺を与えることができます。右派の間にクサビを打ち込むことができる。あるいは右派同士を対決させて、同士討ちを狙った方が、一挙両得だとの思惑もあるでしょう。
毒をもって毒を制す、ならぬ右派をもって右派を制すという左派の戦略です。
そのような左派の思惑を知ってか知らでか、出演や寄稿や出版のために左派メディアへのこのこ出かけて行く右派がいます。
左派であれ、右派であれ、多くの論客は世間で話題になりたい、もてたいとの欲求があります。だから、たとえば、「朝まで生テレビ」なんかに出演して頑張るのでしょうし、中には社会で黙殺されるよりも増しだということで、自らの政治的立場とは異なるメディアからお座敷がかかれば、進んで出かけて行くような論客もあるでしょう。
また、右派内部の対立があったりすとすると、右派雑誌で形勢不利となった側が、左派メディアへ走り、そこで相手を批判するようなこともあります。
その他、右派論客が、左派の読者に自身の主張を直接訴えようと、あるいは左派メディアの論調を変えてやろうとの意気込みで?同メディアに乗り込んでいく場合もあるでしょう。
しかし、変わるのは、当の右派論客の論調で、左派メディアのそれではありません。
左派メディアの誘いに乗った右派論客は、見事に左傾しています。
右派メディアよりも左派メディアの方が、出演料や原稿料が高いのかもしれません。左派メディアによるハニー(honey)・トラップならぬ、マニー(money)・トラップで転んだ、とは言いませんが、彼らが思想的に転んでいるのは事実です。
右派の真贋を見分ける重要な指標の一つは、右派は左派に嫌われてナンボ、だということです。左派に持ち上げられるような右派は、まがい物だと考えた方がいい。左派メディアに登場する右派論客は信用しない方がいい。
以前にも書きましたが、福田恒存氏は「私は朝日新聞に對して非『書く』三原則を守つてゐるんです。つまり、『取らず、讀まず、書かず』(笑)」と発言していますし、渡部昇一氏の文章が、同紙に掲載されることはありませんでした。
右派内部で対立があり、たとえ孤立するようなことがあろうとも、寂しさに耐えかねて、左派メディアに走ったりしない、それがまともな右派の矜持だと思います。