野党の混迷の理由

1.野党の支持率

各党の支持率は NHK世論調査|選挙|NHKニュース」によれば、2021年1月12日時点における、わが国の各党の支持率は、以下の通りです。

自由民主党 37.8%
立憲民主党 6.6%
公明党 3.0%
日本維新の会 1.1%
共産党 2.9%
国民民主党 0.5%
社民党 0.5%
れいわ新選組 0.5%
NHKから自国民を守る党 0.2%
特に支持している政党はない 40.5%

2.混迷の理由

野党がぱっとしない原因は何なのでしょうか。与党の自民党と公明党がしっかりしているからでしょうか。
根本的な理由は、野党が理念を喪失しているからだろうと思います。
理念とは、自分たちが何のために、何を実現するために戦うのか、あるいは誰のために戦うのか、ということです。それに対する解答を野党は持っていないのではないでしょうか。

野党の政治家たちは言うかもしれません。
「与党の自民党と公明党の連立政権だって、理念が相違する者同士の野合にすぎないし、彼らだってちゃんとした理念など持っていない!」
けれども、与党は特に理念を示す必要はありません。彼らは大筋としてこれまでやってきた政治を、これからも継続する立場なのですから。
むしろ、与党に取って代わろうとする野党こそ、理念を提示する必要があります。

3.理念の喪失の経緯

冷戦時代は、自由・資本主義体制と、社会・共産主義体制が対峙した時代でした。
左派は、資本主義社会における虐げられた労働者階級のために、ひいては社会・共産主義社会の実現のため戦うのを目的にしていました。
しかし、第二次世界大戦後、社会・共産主義者の予想に反して、西側資本主義国は経済的に発展し、また労働者階級も「鉄鎖のほかにうしなうなにものもない」階級ではなくなりました。そして、今日のわが国では、大企業の正社員や正規公務員はむしろ特権層です。

東側の国々は社会主義体制を放棄し、後進諸国もだんだんに経済的に発展し、西側先進諸国の一人勝ちの時代も終わりました。また、先進国の企業は、工場等を安価な労働力を有する後進国に移し、国内では非正規雇用の社員を利用し、利益の確保に奔走しました。

わが国の少子化の原因の一つは、非正規雇用の社員が結婚に踏み切れないことにあるのは明らかです。野党は当然、労働者一般から、非正規労働者へと軸足を移し、彼らと共に戦うものと思われました。ところが、野党は、非正規労働者には目もくれませんでした。そして、今でも彼らの権利は捨て置かれたままです。

野党は何のために、誰のために戦うのかということを見失っているので、冷戦終了後から今日まで、様々な政党が生まれましたが、それらの殆んどは泡のように、生まれては消えて行きました。

4.アメリカと日本

アメリカの左派政党民主党は、以前は労働者のための政党でした。しかし、トランプ氏の時代になって、ラストベルト(錆びた地帯)を初め、労働者は共和党支持へ流れているようです。一方、民主党は労働者の政党であることから、社会のマイノリティのために戦う方向へ舵を切りました。
アメリカは人種も宗教も多様で、見るからに多数派=白人ではないという人たちが大勢います。要するに、多数のマイノリティがいます。

しかし、わが国には、見た目で直ぐにわかるというようなマイノリティはいませんし、マイノリティ自体が少数です。彼らの権利を勝ち取るために、彼らを救うために戦うことを目標に掲げても、大勢の人たちの賛同も、票も得られません。だから、現実政治家は、そのような方向に走ることはできません。
マスメディアや学者など進歩思想輸入業に携わる人たちは、アメリカを真似てマイノリティ救済の報道や言論を行っていますが。

5.理念の探求と設定

わが国の野党は、以前は労働者階級のために戦ってきましたが、しかし、今後マイノリティのために戦うだけのモチベーションはありません。野党が伸び悩むはずです。

混迷を止めるには、新たな理念を模索し、設定すること。世の中で困っている人、救われるべき人たちは誰なのかを、探求すれば良いのですが、野党だって、もともと理念が異なる人たちの寄り合い所帯なので(自民党を飛び出した人たちと旧社会党的な人たちと)、それをすると分裂の危険性が高まります。

党の分裂を避けるためには、どのような戦い方をすれば良いでしょうか。
理念の問題は棚上げにして、それ以外の問題で、与党の非を衝くしかない、その結果が、モリ・カケ・サクラでしょう。
しかし、そんなことをやっていれば、じり貧になるばかりでしょう。

野党の理念の喪失は、国民にとって、とりわけ苦しんでいる人たちにとって、不幸です。