日韓どちらが加害者でどちらが被害者か

1.玉川徹氏の発言

日本と韓国の間には、歴史問題を巡って、認識の相違とそれを原因とする軋轢があるのは周知の事実です。
昨年9月11日に放送されたテレビ朝日系の番組で、コメンテーターの玉川徹氏は発言したそうです。

「加害と被害の関係があった場合には、被害者が納得するまで謝るしかないと思います。そういう態度をドイツは取っています」(1)

「被害者が納得するまで」と言いますが、どういう要件を満たせば、被害者たる韓国が「納得」したことになるのでしょうか。
韓国民の過半数が承認すれば良いのでしょうか、あるいは殆ど全ての同国人が承認しなければならないのでしょうか、それとも別の要件があるのでしょうか。

日本の謝罪に対して、韓国人のほほ全てが納得するようなことはあるでしょうか。そんなことはありえないでしょう。そして、そのような中で、同国人の殆どが納得するまで謝るしかないのだとしたら、日本は永久に韓国に謝罪する必要があるということになります。
永久に謝罪を要求する韓国と、謝罪を求められる日本と。そのような関係の二国が和解することは、永遠に不可能でしょう。

ではなぜ玉川氏は、「加害と被害の関係があった場合には、被害者が納得するまで謝るしかない」などと言うのでしょうか。
両国の和解を望んでいないから、と解釈するのが自然でしょう。
氏は、日韓の和解を妨害しているのです。

2.日韓のどちらが被害者か

国際関係で「加害と被害の関係があった場合には」、各々の国民の賛否の多寡に拘わらず、政府が承認すれば「納得」したことになります。

「国際法では戦争や支配など不幸な過去は条約や協定で清算し、その後は内政不干渉で歴史認識は外交に持ち出さないのが原則だ」(2)

日本と韓国の間で1965年日韓基本条約と日韓請求権協定が結ばれ、後者には日韓双方の請求権の問題は「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」との文言があります。
ということは、被害者たる韓国は納得したということです。

1965年は、終戦から二十年後のことで、当時日本が韓国を併合していた訳ではありませんし、後者は独立国でした。そして、日韓基本条約はアメリカが公然と調停工作を行ったとのことですし、ということは米国の監視もあったということです。

むしろ基本条約や請求権協定が結ばれた後で、しかも何十年も経ってから問題が蒸し返された場合、蒸し返した側が加害者であり、蒸し返された側は被害者なのです。
いわゆる徴用工、そして慰安婦の問題は、韓国が加害者で、日本は被害者なのです。

玉川氏の論理に従うなら、被害者たる日本が納得するまで韓国は謝るしかない、ということになります。

(1)https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/1545180/
(2)西岡力、『Hanada』、2019年3月号、46-7頁