地方の衰退が言われて久しい。
田舎に住んでいても、夫婦で生活でき、子供に高等教育を施すことができるような仕事が減ったために、人口が流出し、経済も沈滞あるいは縮小している、それが地方の衰退でしょう。
「地方衰退の第一の原因」にも書きましたが、その一番の原因は産業構造の変化にあります。
昔は各地に散らばって生活をしなければならなかった第一次産業中心の時代から、散らばって生活をする必要がなくなった、というよりも、工場やオフィスや住宅地や商業地など、人間が集まって生活し、労働したほうが効率が良い時代へ移行しています。
問題は、地方衰退の、もう一つの原因です。
ウィキペディアの「シャッター通り」によれば、シャッター商店街等は「1980年代後半から顕在化しており」、特に2000年の大規模小売店舗法の改正により、大規模店が各地の郊外に建設されました。
その結果、小売店が壊滅し、小売店とそれなりに共存していた百貨店も凋落の一途をたどっています。
一方、減少する小売店に対して増えたのが、ショッピングセンター、ホームセンター、ドラッグストア、その他の量販店やコンビニ、ファーストフード店など(以下、「大規模店等」)です。
それら大規模店等の店舗で売られている商品は、かつて小売店等で売られていたものです。いいえ、品揃えは小売店よりも大規模店等の方がはるかに豊富です。そして、客足が後者の方へ移ったため、前者が衰退することになりました。
小売店の多くは廃業し、店員さんたちはリストラされました。そこで働いていた人たちは、あるいはその子供たちはどうなったでしょうか。
ある者は職を求めて大都市圏へ転出し、ある者は客を奪った大規模店等へ職を求めたと考えられます。
いちいち聞いたりはしませんが、大規模店やコンビニで働いている人たちは、非正規雇用が多いのではないでしょうか。
たとえ非正規雇用でも、小売店で働いていた時よりも、報酬が多く、待遇が良いのなら、地方の衰退もそれほど顕在化しなかったでしょう。けれども、恐らく小売店時代よりも、大規模店等で働いている現在の方が経済的に悪化していると思われます。
小売店から大規模店等への転職→年収の低下→生活必需品を安売り大規模店等で購入→さらなる小売店の廃業→一部の者は大都市圏へ、一部の者は大規模店等へ転職・・・・負のスパイラルです。
地方において、消費の活力あるプレーヤーは、大手企業の正社員と正規公務員だけです。
大手企業は生産拠点の多くを海外へ移転させましたし、国内では雇用の調整弁として非正社員を活用していますし、国や地方公共団体も非正規公務員を活用しています。また、大規模店等で働く人たちの待遇も今述べた通りです。
消費の活力なきプレーヤーが増加している、それが地方衰退の第二の原因だと思います。
既に述べましたが、大枠としては、何らかの産業革命でもない限り、地方の人口の流出、その結果としての経済の下降は避けられないだろうと思います。
ただ、コンビニや大規模店の伸長が、地方の衰退に拍車を掛けている、のではないでしょうか。
この先、大規模店等が社員の報酬を抑え、競合店との競争のためさらなる安売りをして行けばどうなるでしょうか。今はまだ、大規模店等の出店は増加基調にあるようですが、そのうち攻勢極限点(攻撃の限界点)に達します。その後は、右肩下がりの時代に突入です。
若者たちがさらに大都市圏へ移住し、高齢者が減少すれば、何れ大規模店等は店舗のリストラを進めなければならなくなるでしょう。大規模店等にとって、地方の衰退は自社の衰退なり、です。
地方の衰退=自社の衰退を止めるには、止められないにしてもその進行を緩和させるためには、どうすれば良いでしょうか。大規模店等の経営者は、自社の社員の待遇の改善をはかる、しかないだろうと思います。