E・ルトワック氏の「韓国が反日の理由」

1.韓国・オランダ・スウェーデン

月刊『Hanada』12月号に、米戦略国際問題研究所上級顧問エドワード・ルトワック氏の「韓国よ、歴史の真実を学べ」という記事が掲載されています。
そこで、ルトワック氏は述べています。

「若いオランダ人たちは、自分の父親たちが臆病者であったからこそ、戦後に反ドイツ的な感情を持ち続けたのである」(37頁)
戦時中、「オランダは、まるでドイツの使用人のように振る舞っていた。だからこそ戦後、ドイツ人を長期にわたって憎しみ続けることになった」(38頁)

「戦後、たとえば一九五三年頃になると、ヨーロッパの多くの国ではドイツをすでに許していたが、スウェーデンはオランダと同じように、超がつくほどの反ドイツ感情を保持していた。
戦時中、彼らはオランダ人と同じように臆病者で、ナチスに協力していた」(40頁)
「戦時中にドイツに協力的だった国こそ、本当に反ドイツ的な態度をとるようになる」(40頁)

「一九四五年までの朝鮮半島で、実は抵抗運動(レジスタンス)と呼べるようなものはほとんど発生していない。朝鮮人たちは概して服従的だったのだ。
むしろ多くの人々は、服従以上の態度で自発的に日本に協力し、日本軍に積極的に志願したのである」(37頁)
故に、「韓国人はいまだに、自分たちの父親や祖父たちが臆病者で卑屈だったという心理的トラウマに悩まされている」(38頁)

一方、戦後「ユーゴの人々はドイツからの旅行者を大歓迎していた。
その理由は、ドイツ人がユーゴ人を殺し、ユーゴ側もドイツ人を大勢殺したからだ。彼らは決して臆病者ではなく、立ち上がり、戦ったのである。誰も自分たちの父を恥じることもなく、誇りを持てた。だからこそ戦後、ドイツ人に対して友好的になれたのである」(37頁)

ルトワック氏の主張を敷衍するなら、戦時中アメリカ人は日本人を殺し、日本側もアメリカ人を大勢殺したから、戦後日本人はアメリカに対して友好的になれたということでしょう。
米軍と良く戦った愛国的日本人が戦後親米になり(戦勝国史観には批判的でしたが)、反戦や社会主義思想のゆえに投獄され、そこで温温と過ごした「臆病者」が戦後反米反日的な左翼になったのでしょう。なるほど、平仄が合います。

ついでに述べるなら、戦後の保守派は親米になりましたが、「反米保守」などという人たちは、冷戦中左翼やノンポリだったりして、(意識の上であれ)左翼とちゃんと戦わなかったから、その後ろめたさのゆえに、左翼とたたかった親米保守派に烈しい対抗意識を持つのでしょう。
冷戦時代に左翼でもノンポリであった訳もなく、左翼と言論でたたかった人で、冷戦後親米保守を批判した人を、私は一人も知りません。
結局のところ、反米保守派はニッポン・ネオコン(転向保守)なのです。彼らは、社会・共産主義者、リベラルとは別の、左翼の一分派なのです。

2.北朝鮮と韓国

ルトワック氏は、現在の北朝鮮と韓国についても語っています。

「われわれが認めなければならないのは、北朝鮮の核兵器は、中国からの自立と存続を保証しているということだ。(中略)北朝鮮の核が中国からの自立と存続を保証している以上、北朝鮮がこれを手放す可能性は非常に低い」(34頁)

戦前の日本が日清、日露戦争をたたかわざるをえなかったのは、そして韓国を併合せざるをえなかったのは、安全保障の点から朝鮮半島を支那やロシアに渡すわけにはいかなかったからでしょう。

ところで、現在北朝鮮はどこの国の脅威のゆえに核兵器の開発と保有を進めているのでしょうか。
ルトワック氏が言うように、第一は支那でしょう。以下は私見ですが、第二は同じく陸続きのロシア、第三がアメリカで、第四、五が韓日ではないでしょうか。北朝鮮は核兵器を保有することによって、わが国の防波堤になってくれている面もあるのです。

一方、「韓国はもはや米国や日本と過去に結んでいた関係に戻らないことが明白になった。彼らに中国に抵抗する意思はなく、一方的に従属しつつある」(41頁)

北朝鮮の金正恩委員長は梯子をかけて、トランプ大統領の耳元で囁いたのかもしれません。「わが国の核は貴国に向けたものではなく、支那に向けたものである」とかなんとか。

「中国に抵抗する意思」がある北朝鮮と、ない韓国と。
トランプ氏が文在寅大統領よりも、金正恩氏をより信頼しているように見えるのは、そのせいもあるように思います。