米中対決時代にロシアはいかに振舞うか

1.米中対決時代

中華人民共和国のGDPは2010年に日本を抜き、現在米国に次いでどうどうの世界第二位です。2030年か2050年には、米国を抜き去るとの予想もあります。
また、「世界の軍事力ランキング」では、米露に次ぐ第三位です。
経済的、軍事的に力をつけた中共が自信を持つのは当然でしょう。

中共が目指しているのは、世界における米中の二極化、そして、将来的には米国の追い落としだろうと思います。

そのような中共の台頭に対して、さすがに米国も危機感を抱くようになり、副大統領ペンス氏による昨年10月4日の演説以来、中共の覇権国化を阻止しようとの意図が明確になりました。

2.ロシアと中共の蜜月?

このような情勢下で、以下のようなことが起こっています。

2018年9月、ロシア軍は軍事演習「ボストーク2018」を実施しましたが、そこに初めて中共軍が参加しましたし、今年の6月6日、ロシアにとって大した脅威ではないのに、プーチン大統領は普天間飛行場の辺野古移設について、「地元住民や知事が反対しているのに建設が進んでいる」と発言し、中共の援護射撃をしましたし、7月23日日本海でロシアと中共の爆撃機四機が合同飛行を行いました。

これ以外にも、ロシアと中共の親密さを示す事例はあるでしょう。
近年ロシアは中共寄りの姿勢を見せていますが、これは露中が固い絆で結ばれていることを意味するでしょうか。

意味しません。
近隣国同士、表面的には仲良くしているように見えるものの、実際は仲が悪い、あるいは反りが合わないという例はままあります。
ベトナムと支那、支那とインド、インドとパキスタン、そして、日本と韓国、日本と支那など。それと同様、ロシアと支那も基本的には反りが合わない国同士であるのは否定しがたいでしょう。

一方の中共はロシアの核戦力を含めた軍事力を脅威に感じているでしょうし、他方のロシアは極東における同国の人口の希薄と中共の人口の膨大のため、後者による人口侵略を警戒しているでしょう。

3.ある仮定

ある極端な仮定をしてみると、ロシアと中共の「蜜月」の度合いが明確になると思います。

もし米国と中共の間で戦争になった場合、ロシアはどう対処するでしょうか。最近の連携通り中共の側に立って、米国とその同盟国・友好国と戦うでしょうか。

戦うわけがありません。
ロシアは負ける側につくような選択はしないでしょう。十中八、九以上の確率で、ロシアは米国側に寝返るだろうと思います。反りが合わない中共と心中するはずがありません。

第二次世界大戦の前、ドイツと不可侵条約を結び、同国とポーランド分割を行ったロシアのことです。あるいは、終戦間際の1945年8月9日、日ソ中立宣言を破って日本に攻め込んできたロシアのことです。
米中戦争が起これば、ちゃっかり米国側に寝返って、中共の領土のいくばくかを掠め取ると予想するのが自然でしょう。

逆に考えるなら、ロシアと中共が蜜月を演出している間は、米中戦争の可能性は低いだろうと思います。
なので、私は、ロシアと中共の連携はあまり心配しておりません。それはどこまでいっても、蜜月ではなく蜜月の演出にすぎないのですから。

もっとも、「十中八、九以上の確率」と書きましたが、わずかに露中が組めば米欧日他に勝てると考える冒険主義者が現れないとも限りません。
そこで、万全を期すために、トランプ氏も安倍氏もロシアを自分たちの陣営に引き寄せようとしているのではないでしょうか。

米欧日露対中なら、さすがに中共の首脳だって、勝てるかもしれないとは考えないでしょうから、戦争の可能性は限りなくゼロ%に近くなります。

4.もっと寄こせ

では、ロシアと中共はなぜ連携しているのでしょうか。
両者とも味方が少なくて孤独だからでしょう。
中共は覇権国化を目指して、米国の反発を買っていますし、ロシアはクリミア、セバストポリの併合で欧米から経済制裁を喰らっていて、いまだに解除されていません。
要するに、敵の敵は味方ということで、結びついているだけでしょう。彼らは強者グループ(米国及び同盟国・友好国)に対する弱者連合です。

ロシアが強者グループに対して暗に求めているのは、経済制裁の解除を含めて、「もっと寄こせば、そっちよりの姿勢を示すよ」ではないでしょうか。

そもそもウクライナも、クリミアも、セバストポリも、元来はロシアの勢力圏です。
そこを巡って、欧州はロシアと本気で事を構える勇気と能力があるのでしょうか。ただアメリカの威を借りて、強がっているだけではないでしょうか。ロシアに対する経済制裁もほどほどにすべきだと思います。

むしろ対中を意識して、ロシアを取り込もうとしているトランプ大統領や安倍首相の方が大局が見えているのではないでしょうか。
もっとも、欧州にとっては、中共の脅威よりも、ロシアの脅威の方が切実だから仕方がないのかもしれませんが。

【追記】
「中共」と「支那」を使い分けています。
共産化している支那が中共で、共産化していないのが支那です。中共が支那になれば、凶暴性がかなり和らぐと思うのですが。それは、希望的観測でしょうか。