右派・保守・右翼・極右

1.理念型

右翼(右派)、左翼(左派)という言葉は、フランス革命期の議会において、議長席から見て右側に保守派が、左側に進歩派が席を占めたことに由来します。
ある場所(中央・地方議会なり、国民全体なり)の勢力分布をおおよそ真ん中で分けて、そこを中心に保守的な側を右翼(右派)、進歩的な側を左翼(左派)と呼びます。

飛行機の機体をデフォルメして説明しましょう。
機体全体を勢力分布全体だと考えます。胴体部分を前から後ろにかけて(操縦席側から尾翼側へ)、中央で線を引きます。
胴体右部分と右の翼が右派で、胴体左部分と左の翼が左派です。そして、左右の翼の両端が極右と極左です。極右極左と、それ以外の勢力は、政治目的を実現するための手段として、暴力を用いるかどうかの違いです。
以上は理念型(注)です。

(注)理念型

2.欧米の場合

しかし、現実の政治は理念型通りではありません。
二大政党制の国は理念型に近い。たとえば、現在のアメリカは、共和党が右派政党であり、民主党が左派政党です(ウィキペディアの「右翼」の項目には、次のような記述があります。「ただし、アメリカはマッカーシズムや赤狩りといった反共主義の政策により左翼と見られることを忌避する傾向が強いため、革新派はリベラルと名乗る場合が多い」)。

一方、欧州の多党制の国では、中道と呼ばれる政党があります。胴体右部分に相当するのが中道右派であり、胴体左部分が中道左派で、右の翼が右翼政党、左の翼が左翼政党です。そして、左右両翼の先端部分が極左極右です。

3.日本の場合

日本の場合はどうでしょうか。
書店で「右翼」の棚を見れば分かりますが、右の翼の全体ではなくその先端部分のみを右翼と呼んでいます。欧米で言えば、極右に相当する勢力です。そして、胴体右部分と先端以外の翼の部分は保守です。
一方、胴体左部分(リベラル)と左の翼(社会・共産主義者)が左翼であり、左の翼の先端が極左です。もっとも、胴体左部分=リベラルは左翼ではないという人たちもいます。が、今日左の翼の半分くらいまでリベラル派が侵食しています。

現実の政党では、たとえば自民党及び同党議員が皆胴体右と右の翼の部分に属している訳ではありません。胴体左的思想傾向の議員もいます。他方、野党の側も、胴体左と左の翼派ばかりではなく、胴体右的思想傾向の議員もいます。
わが国の与党も野党も(共産党と社民党以外は)、保守とリベラルの混成部隊です。そしていわゆる保守政党とリベラル政党の違いは、構成員中保守派が多数派か、リベラル派が多数派か、によります。

日米欧で、「右翼」という言葉の意味にズレがあるのでややこしいのですが、日本ではさらに政治勢力に対する呼称が非対称になっています。もし左の翼の先端が極左なら、右の翼の先端は極右とするのが自然です。ところが、日本語の慣用ではそこは右翼なのです。日本語の慣用が左右対称ではないので、右翼と極左とか、保守と左翼とか並べて記述したりします。
また、右翼とは右の翼の先端派のことなので、胴体右部分+右の翼全体は右翼とは言いません。なので、仕方なく私は右派と書いています。すなわち、右派=保守+右翼です。

4.まとめ

第一、日米欧どこの国でも、胴体の中央から右側(胴体右部分+右の翼)は右派であり、
第二、アメリカのような二大政党制の国では、極右以外の右派・右翼は保守であり、
第三、欧州のような多党制の国では、右の翼部分のみが右翼政党で、胴体右部分は中道右派であり、
第四、日本の場合は、右の翼の先端部分のみが右翼で、先端以外の翼と胴体右部分は保守だということになります。

5.ネトウヨ

蛇足ですが、インターネットの普及によって、ネトウヨという言葉が普通に使われるようになりました。ネトウヨはネット右翼を約(つづ)めた言葉です。
ところが、ネトウヨ・ブロガーの記事を読むと、たとえば私は自称ネトウヨのよもぎねこさんのファンですが(「よもぎねこです♪」)、彼女は思想、言論の自由や議会制民主主義を否定していません。ネトウヨは、必ずしも右の翼の先端に位置することを意味していません。
彼らは、正確にはネット右派と呼ぶべきだろうと思います。