「安倍改憲に勝つ」に賛同

5月3日の憲法記念日、朝日新聞に丸々1ページをさいた意見広告が掲載されました。
題して、「安倍改憲に勝つ」。
「市民意見広告運動/市民の意見30の会・東京」の呼びかけで、賛同者の氏名もずらりと掲載されています。
その意見は、以下のようなものです。
所々引用して、それに対してコメントをします。

・「私たちの憲法はアジア太平洋戦争の反省に基づき、主権者が政府に課したものです」

「アジア太平洋戦争」なるものはありません。先の大戦の名称は大東亜戦争、太平洋戦争もしくは第二次世界大戦です。名称の変更は歴史修正主義の始まりです。

日本国憲法は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領中に、つまり、わが国(民)に主権がない時に、主権者=実質的にアメリカが日本に課したものです。

・「安倍政権は、(中略)憲法9条への自衛隊の存在明記に強い意欲を見せています」

ウィキペディアの「立憲主義」の項目によれば、「近代憲法は国家権力を制限し憲法の枠にはめ込むことによって権力の濫用を防ぎ国民の権利(とくに自由権)を保証することを目的としている」とあります。
とするなら、憲法に国家権力の暴力装置たる「自衛隊の存在を明記する」のは当然でしょう。「憲法の枠にはめ込」まなければ、「権力の濫用を防」ぐことができないのですから。

・「武力では平和も生活も守れません」

これは前大戦における敗戦国にのみ通用する教訓であって、戦勝国は別の教訓を得ています。それは、最終的には武力でしか平和は守れない、というものです。そして、それは正しい。
第二次大戦において、世界の大多数の国が戦勝国側です。だから、世界の大勢は、戦勝国の教訓に学び、従っています。

・「人びとや国ぐにを対立に追い込む武力ではなく、理解と信頼を構築する対話こそ最も確実、かつお金のかからない安全保障だからです」

「理解と信頼を構築する対話」とは具体的にどのようなものなのか不明ですが、それが「最も確実、かつお金のかからない安全保障」との主張に、歴史的裏付けはあるのでしょうか。
それで安全保障が実現できるのなら、どこの国(たとえば米朝)も苦労しないでしょう。

・「沖縄の人びとは、(中略)意思を本年2月の『辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票』の結果で示しました。実に、投票した7割超の人びとが『新基地建設ノー』の意思を明らかにしたのです」

2月24日に投開票された県民投票の結果を見てみましょう。
投票資格総数は115万3591人であり、そのうち「反対」は43万4273人(37.65%)です。棄権は54万8206人(47.52%)で、一番多い。
投票資格総数100%一反対37.65%=反対じゃない(賛成)+必ずしも反対じゃない(どちらでもない、棄権)62%強、だと解釈できないこともありません。とすると、反対派の方が少数派です(選挙で自民党が勝った場合、得票率の少なさを強調する左派的解釈の真似です)。
「反対」に投票せよとの同調圧力があったことを考えるなら、沖縄県民は「普天間ノー」の強い意思と、「辺野古ノー」の弱い意思を示したのだろうと思います。

・「日本政府はそれ(この上の新たな基地の押しつけはごめんだという意思)を平然と無視し、工事強行を続けています。沖縄には民主主義がなくてもよい、というのでしょうか」

安倍氏は合法的かつ民主的に選ばれた首相です。そして、辺野古埋め立てはその政治運営の一つです。一方、県民投票は正式な民主的手続きではありません。
それをあたかも民主的手続きであるかのように扇動した政治家やメディアは、何が正当な手続きなのかということを県民や国民に分からなくさせ、県民に過大な期待を抱かせ、かえって失望させました(県民の不満の増大が、反権力メディアの狙い?)。

県民投票は、民主的に選ばれた政府の決定の代わりにはなりません。「反対」37.65%の意思が通るのなら、それこそ民主主義の否定です。日本には「民主主義がなくてもよい、というのでしょうか」

・「アベノミクスは大失敗」

アベノミクスは大成功だとは思いませんが、「大失敗」だというのは言い過ぎでしょう。他にどのような策があるのでしょうか。
安倍氏ではなく、この人が首相になっていた方が経済はずっと上向いていたはずだという、そのような政治家はいるのでしょうか。

・「12年前の2007年、主権者たちは年金問題や相次ぐ閣僚の不祥事が続いた第一次安倍政権に対して参院選挙でノーの意思を示しました。その結果が首相の退陣、その後の政権交代につながりました」

「その後の政権交代」の結果、悪夢のような民主党政権に「つながりました」。
安倍政権よりも民主党政権の方が良かったのでしょうか。

この会の人たちは、民衆は東から西へ、北から南へ逃げているのに、東や北の体制の方が優れていると言い張った人たちの思想的末裔なのかもしれません。

私は、「安倍改憲に勝つ」に賛同、はできません。