女医の増加は無医地区の増加なり

1.医科大学の入試不正問題

東京医科大学での発覚を端緒に、入試不正問題がその他の医大へ波及していきました。
問題になったのは、女子受験生に対する点数操作です。女子は合否判定で不利な扱いを受けていたらしい。それが世の怒りを買い、騒動になりました。

それに対して、医大が男子学生を優先的に合格させていたことを、必要悪とする意見も一部で語られました。
たとえば、医師でタレントの西川史子氏は発言しています。
「女性ばかりを医者にしてしまうと眼科と皮膚科ばかりになってしまう。(中略)外科は女性だと大変です。人の太腿だけで20キロもある。女医だと持てないですね。私は持てません」云々。

その他、結婚や出産もあって女医は離職率が高いこと、休日出勤、夜勤、あるいは夜間の呼び出しに対応できないこと、そのために男性医師に負担がかかるなどの理由が指摘されました。
しかし、そのような主張がかき消されるほど、女性差別は許せないとの声が圧倒しました。

2.無医地区への赴任

次のような想定はどうでしょうか。
若い男性医師なら、単身で、あるいは妻子を伴って、無医村なり、無医地区なりへ赴任するということはありうるでしょう。
では、女性医師の場合はどうでしょうか。単身で、あるいは夫子を伴って無医地区へ赴任するということはありうるでしょうか?
夫も医師で、夫婦揃ってというのでない限り(その場合も女性が離職したり、補助役へ回ったりではないでしょうか)、女医が無医地区へ赴くということはないだろうと思います。たいていの女医は都市部に留まるでしょう。

すると、どうなるでしょうか。
都市部では医師不足は発生しませんが、田舎や僻地、過疎地では医師不足が発生することになります。
医大入試での、女性差別は不当だ!との「正論」が、数十年後には、無医地区の拡大をもたらすことになるのではないでしょうか。

3.「左派の正論」

朝日新聞は2018年8月3日付の社説、「東京医大入試 明らかな女性差別だ」で言っています。

「女性医師の休職や離職が多いのは事実だ。だがそれは、他の多くの職場と同じく、家庭や子どもを持ちながら仕事を続けられる環境が、医療現場に整っていないためだ。(中略)
その解決に向け先頭に立ち、意識改革も図るのが、医療、研究、教育を担う医大の大きな役割ではないか」

朝日新聞が属するメディアの世界では、「家庭や子供を持ちながら仕事を続けられる環境が」「整ってい」るのでしょうか?
東京医大の入試不正を盛大に批判するメディアこそ、そのような環境を作り、模範を示せば良いと思うのですが。

それはともかく、左派はいつも正義派ぶり、抽象的にしか「正論」を語りません。そして、実効性のある改善策は示されないまま、現実は進行します。女医は増えるでしょう。
かくして、女医の増加は無医地区の増加なり、ということになります。

【追記】
「都市部では医師不足は発生しませんが、田舎や僻地、過疎地では医師不足が発生することになります」と書きましたが、「左派の正論」によって、彼らの多くが住む都市部は困らない一方、地方がそのしわ寄せを受けることになる。
これは何かに似ていないでしょうか。
アメリカにおける社会の分断にそっくりです。
割りを食うのは、地方の人たちです。

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