北朝鮮の「完全な非核化」?

10月13日付朝日新聞夕刊によれば、英BBCとのインタビューで、「韓国の文在寅大統領は12日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が完全な非核化を約束したと改めて強調した」とのことです。

「文氏によれば、北朝鮮は『経済発展のために核を放棄する』『体制だけ保証されれば、制裁という困難に遭いながら核を持つ理由は全くない』と約束したという。
文氏は『金正恩氏が語る完全な非核化は、現存する核兵器と核物質などを全てなくすことも含まれている』と語った」

そうです。

私たちが知りたいのは、麗しい目的地の話ではありません。どのような経路をへて、そこに辿り着くのかということです。
どのような要求、つまり「米国の相応の措置」が認められたら、金正恩氏は非核化を実施すると述べているのでしょうか。その方が知りたい。
しかし、文氏の発言には、その要求について具体的な言及がありません。なぜでしょうか。それは、米国が決めるべき問題だからでしょうか。もしそうであるなら、米国が呑めない要求だったら、非核化は実現しないということでしょう。

10月15日に配信されたTBS NEWSによれば、仏フィガロ紙への書面のインタビューに文氏は、

「北朝鮮は経済制裁により、すでに困難に直面していて、非核化合意に違反した場合に、さらに経済制裁が強化されれば耐えることができない」

ゆえに、

「北朝鮮が、経済状況の悪化を招く非核化合意の破棄を選択することはない」

との「認識を示した」そうです。

文氏の言う通りなら、アメリカを翻弄する余裕など北朝鮮にはないはずです。速やかに、非核化に着手しなければおかしい。しかし、同国は米国に対し条件闘争を行っているように見えます。あるいは、本音は非核の意志はなくて、のらりくらりして、トランプ大統領の任期切れを待っているようにしか見えません。

文氏は、麗しい目的地の目くらましを受けて、舞い上がっていなければ良いのですが。
文氏のみならず、トランプ氏もそうですが、一国の大統領の発言だから憂慮に及ばないと、韓朝、ひいては米朝の交渉も安心して見ていられないのは、残念です。