1.分断の発生
夫婦同姓が当たり前だった時代、この問題に関する限り、社会に分断はありませんでした。
ところが、同姓に不都合なり、疑問に感じたある人物が、別姓を唱え、それに同調する人たちの数がある程度に達し、彼らがその権利を公然と主張するようになってから、分断が始まりました。
外国人参政権、外国人労働者・移民の受け入れ、同性婚、男女平等原理主義その他もそうです。
国籍を有する者が参政権を有するのが当たり前だと考えられていた時代・・・・
移民の受け入れがわずかだった時代・・・・
異性婚が当たり前だった時代・・・・
男女に性差があるのは当たり前だと考えられていた時代(女性差別もあったでしょうが)・・・・
同じパターンです。
進歩派が新しい思想を提起することによって、社会の分断が発生します(注)。
かつて、資本主義が当然だった社会に、ある日社会・共産主義者が登場し、新しい政治経済体制案を提出することによって、社会に分断がうまれ、それがエスカレートして、朝鮮、ベトナム、ドイツはついに国家の分裂を招くに至りました。
もっとも、新しい思想が全て悪い思想だったわけではありません。善い思想もありました。たとえば、自由主義や民主主義は善い新思想でした。一方、共産主義は悪い新思想でした。そして、進歩派が提起するのは、後の時代に捨て去られるような、悪い新思想の方がずっと多い。
2.進歩派による解釈の転換
社会の分断は進歩派による新思想の発案、そして、その普及によって生じるのですが、彼らはそうは考えません。社会全体がすんなり別姓を受け入れさえすれば、分断は起こるはずがないのに、それを拒絶する同姓原理(保守)派が自説に固執するから、分断が発生すると考える。
進歩派にとって、分断の原因を作っているのは、進歩に抵抗する保守派ということになります。マスメディアは日米欧どこでも進歩派が多数派ですから、分断の責任は保守派にあるというのが常識化しているのでしょう。
3.トランプ大統領と米社会の分断
元々人種、民族、宗教の構成が複雑であるし、冷戦時代アメリカは日欧などとは違って国内に有力な社会主義勢力がいなかったから、今日社会の分断がなおさら気になるのかもしれません。
さて、進歩派が多数を占めるアメリカの大手メディアは、トランプ氏の大統領当選の予想を外しました。なぜでしょうか。
進歩派・インテリの意識が、保守派・大衆のそれと乖離しているからでしょう。
トランプ氏が大統領になって以来、米マスメディアは、かれが社会の分断をあおっていると批判しているようです。しかし、彼らは原因と結果を取り違えています。
進歩派が新思想を考案し、それを社会に強要するから(たとえば、ポリティカル・コレクトネスや移民の大量受け入れ)、それに馴染めない保守派・大衆との意識の差が大きくなり、社会の分断が昂じるのでしょう。
進歩派・インテリの速度に、保守派・大衆がついていけなくなっていること、前者が後者の不安や不満を理解しえなくなっていること、それらがトランプ大統領の当選という結果になって表れたのだと思います。
4.懐疑の欠如と性急さ
進歩派は自分たちの主張の正しいことを信じて疑いません。そして、その主張通りの社会が早期に実現することを求める。彼らの速度に合わせられない保守派・大衆に向かって、スピードが遅いと叱る(杉田水脈議員の、LGBTのカップルには生産性がないとの発言に対するバッシングもそれでしょう)。
しかし、進歩派が言う理想社会は、本当により良き社会なのでしょうか。それは、「反革命」を告発ないし密告し、吊し上げる社会ではありませんか?保守派・大衆は、彼らが指し示す目的地に対して、疑問と不安を抱いているのです。
世に謂われる社会の分断は、進歩派の懐疑の欠如と性急さとが合わさって生まれているのだと思います。
(注)
但し、憲法に関しては、占領下米国によって強要されたため、保守派が改憲という新しい立場を提起し、その「平和主義」の故に進歩派が護憲を主張するという具合にねじれが生じています。
追記
皇位継承問題における分断は、女系論の登場によって発生しました。女系論者は自らの正しさを確信しているようです。
しかし、少なくとも、彼らは新たな南北朝の種を蒔き、苗を育てているのは確かでしょう。