「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」。
実際には、ヴォルテールの発言ではないそうですが、彼の名言とされているものです。
他者の意見であれ、自分のそれであれ、本当に「命をかけて」まで守れるかどうか疑問ですが、一般的な意味でなら、誰もこれに反対しないでしょう。ところが、自分のこだわる思想に関する主題になると、途端に雲行きが怪しくなります。
杉田水脈衆議院議員の、LBGTのカップルは、「『生産性』がない」との主張の論文が話題になりました。
異論がある人は、大いに反論したら良いと思います。しかし、同議員の思想・言論の自由を封じるような言動は、常軌を逸していると言わざるをえません。杉田氏を批判する人たちは、彼女の意見に反対しているのでしょうか。それとも、彼女の主張を社会的に抹殺せよと言っているのでしょうか。
杉田氏の除名と議員辞職を求める人たちがいるようですが、それは過剰要求であり、彼らは抹殺論者でしょう。
「私はあなたの意見には反対だ。だから、あなたがそれを主張する権利は認めない」を実践しています。彼らは、全体主義者です。
その意見の賛否に拘らず、杉田氏が「それを主張する権利を守る」人たちは一致して、「それを主張する権利を認めない」人たちと、戦わなければならないと思います。
追記
8月1日付自民党の、「LGBTに関するわが党の政策について」には、こうあります。
「今回の杉田水脈議員の寄稿文に関しては、個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導したところです」。
「左翼としてのリベラル」に書きましたが、自民党はリベラルと保守が混在する同床異夢政党です。理念・政策の実現よりも、選挙互助が優先なのでしょう。そして、杉田議員の主張は世間的には実に不評だった。選挙(総裁選も含む)と政権の支持率を憂慮する上層部の意向が、「指導」を生んだのでしょう。
当初二階幹事長は、「『人それぞれ政治的立場、色んな人生観がある』と述べ、党として問題視しない考えを示してい」(2018年8月2日付、朝日新聞夕刊)ましたが、一転指導になりました。
「わが党はLBGTの方々と共にあります」とのメッセージを表明した。
このフットワークの良さが自民党の強さであり、野党が伸び悩んでいる理由の一つだと思います。